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破折歯根の接着・再植保存法 ⑥[Adhesive & Replantation for Root Fracture ⑥]

症例基本データ

患者:

56才 女性

初診:

2002(H14)/2/15

主訴:

10日程前より左下で強く嚙めない。


  • 初診時のX-ray所見では何ら異常所見は認められない。しかし左下7番が、強く嚙めない。10日前より鈍痛があるという。
    (2002/2/15)

  • 分岐部が腫れて来院。部分切開にて、遠心根の歯根破折が確認された。
    (2002/2/20)

  • 破折歯根接着・再植術の所見。遠心根は完全垂直歯根破折を認めた。抜歯時は歯根膜損傷に注意すること。
    (2002/3/19)

  • 破折歯面を清掃後エッチング・プライマー処理を終えてから、破折歯根の接着へと進む。一連の過程では歯根膜繊維に最大の注意を払うこと。
    (2002/3/19)

  • 抜歯窩は新鮮血餅で満たされている事が必須条件。接着後の歯根を抜歯窩へ再植しているところ。
    (2002/3/19)

  • 左)ope後1W目のX-ray所見。歯根は抜歯窩内で安定。右)歯周パックの所見。
    (2002/3/26・2002/4/15)

  • 術後2Y3M後の口腔内所見。審美的にも機能的にも充分に満足いただいている。「自分の歯のように何でもいただけます」という。
    (2004/6/2)

  • 術後6Y10MのX-ray所見。患歯周囲骨は安定しているものの、遠心根に炎症性吸収の所見が発現か。
    (2009/1/19)

  • 術後8Y5MのX-ray所見。遠心根の炎症性歯根吸収の所見はさほど変化せず。この時点では咀嚼機能に違和感もなく健康歯肉を維持している。
    (2010/8/9)

治療方針

・咬合時の違和感は、歯根破折診断の重要な決め手となる。この症例でも左下7番の遠心根に垂直歯根破折を認めた。 ・大臼歯ではあるものの歯根弯曲の程度から、接着後の再植手術が可能と診断し、抜歯することなく破折歯根の接着・再植術を応用して保存を試みた。

症例のポイント

・大臼歯の接着 再植術は、症例によっては接着後の再植が困難(適応外)となる場合もある。当時(19年前)は、主として破折歯根の接着 再植術に取り組んでおり、現在の 《非抜歯による破折歯根の歯冠内接着保存法》 は未確立であった ・術後経過は極めて順調で「硬いものでも何でも普通に食べられます」と、喜んでいただいた。 ・術後9年目のX-ray所見で遠心根に炎症性の歯根吸収像が発現しつつある様にも見受けられるが、臨床症状はなく咬合も安定している。

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