矯正的歯根挺出法 ⑦ [Orthodontic Root Extrusion ⑦]
症例基本データ
患者:
44才 女性
初診:
2018(H30)/6/25
主訴:
『ひどい虫歯だから、抜歯してインプラント』と診断されている。抜かずに治療できる方法はありませんか。
初診時の正面観。
(2018/7/4)
右上4番歯(第1小臼歯)を抜髄(神経をとる治療)してセラミックと言われている。
(2018/7/17)
右下6番歯の初診時所見。遠心根は骨縁下に及ぶ深いカリエスを示す。
(2018/7/17)
右下6番歯の口腔内所見。抜歯してインプラントとの診断を受けている。
(2018/7/14)
歯根を明示させ、歯根挺出装置を作製する。
(2019/1/30)
装置を口腔内に装着する。挺出前のX-ray所見を示す。
(2019/1/30)
歯根挺出後の口腔内所見と、同部のX-ray所見を示す。遠心根も骨縁上に挺出された。
(2019/6/26)
最終補綴物装着後のX-ray所見。遠心マージンが骨縁上に設定されている。
(2019/9/7)
最終補綴物の口腔内所見を示す。抜歯もインプラントもすることなく、自らの歯で歯列が回復された。
(2019/10/18)
治療方針
・6⏋右下6番歯のcaries(虫歯)は歯肉縁下深くに及び、このままでは歯の保存治療(補綴)は難しい状態です。
・しかしながら矯正的歯根挺出法を応用することで、抜歯を避けることが出来ます。
・決して結果を急いで短絡的に抜歯を選択することなく取り組めば、好結果が得られます。
・この症例では矯正的歯根挺出法を応用した他の臨床例を複数例提示し、治療法と治療結果についての理解を得ることが出来ました。
症例のポイント
・『抜歯してインプラント』と診断されていた歯を、抜かずに保存することができた。同時に右上4番歯も『神経を抜いてセラミック』にすることなく歯冠形態を復元し治療を終了した。
・抜歯も抜髄(神経をとる治療)も[歯を守る歯科医療]の立場から言えば、出来るだけ避けるべき治療法ととらえ、可能な限り歯の保存につとめたい。