非抜歯による破折歯根の歯冠内接着保存法 ⑪[Non-Extracted Approach for Tooth Fracture ⑪]
症例基本データ
患者:
41才 女性
初診:
2019(H31)/3/1
主訴:
奥歯が割れている。『抜歯してインプラント』と言われているが、抜きたくないので来院した。
初診時の正面観。全顎28歯、健全歯が守られている。
(2019/3/8)
左上7番が大きく割れた状態で来院された。「痛くて何も噛めません」
(2019/3/8)
充填物を除去後、矯正用Elastic H5を使用して、破折部の離開を閉鎖する。
(2019/3/15)
破折線は閉鎖され、ほぼ元の歯冠の大きさに戻すことが出来た。
(2019/4/10)
この段階になったら矯正用メタルバンドを患歯周囲に装着し外壁を補強する。
(2019/4/10)
ここで根管治療を開始。髄腔内を精査して、極めて慎重に3根管の治療に取り組む。
(2019/5/22・2019/5/29)
根管充填後、分割による接着Metal coreを作製。歯冠内で組み立てつつ装着する。
(2019/7/5)
最終補綴物装着後5ケ月の口腔内所見。
(2020/1/21)
大きく割れたご自身の歯であったが、再び咀嚼出来るようになった。歯根周囲の歯槽骨も安定し、抜歯することなく保存出来た。
(2020/1/21)
治療方針
・左上7番は近心頬側壁から遠心口蓋側に及ぶ完全歯冠歯根破折歯であり、一般的には抜歯適応症と診断されます。
・破折離開部を閉鎖した後、通法通り歯冠周囲を矯正用Metal Bandで補強した後、慎重に根管治療に取り組みます。
・分割Metal coreを歯冠内で組み立て接着し、最終補綴へ移行。
・これまでの同様な臨床例を提示して、治療内容 治療経過にご理解をいただいた。
症例のポイント
・破折部が広く開大しているこの様な症例では、矯正用のElastic H5を応用して元の歯冠形態に戻す。
・次いで、矯正用Metal BANDで歯冠外周を補強すること。
・破折線との兼ね合いで根管治療は慎重を要する。
・多くは分割式の接着Metal coreを作製し、歯冠内で組み立て補強する。
・テンポラリーCrで経過観察の後、何ら臨床症状もなく経過良好ならば、最終補綴へと移行する。
・非抜歯による破折歯根接着保存例として提示した。