非抜歯による破折歯の歯冠内接着保存法 ⑨[Non-Extracted Approach for Tooth Fracture ⑨]
症例基本データ
患者:
22才 女性
初診:
2019(R1)/1/19
主訴:
2W前に歯が割れて『根の方まで割れているので抜歯』と言われている。インプラントを勧められているが抜かずに治療できませんか。
初診時の口腔内所見と右上6番のX-ray所見を示す。
(2019/1/19)
右上6はMetal Bandで外部より補強する。歯冠内は近心頬側から口蓋側にかけて斜めに破折し、髄床底からは出血の所見を確認した。
(2019/2/23)
3根管を支えとする分割コアーを作製。
(2019/3/2)
Metal core装着直前に破折線に沿ってV-Cutし、接着をより強固なものとする。
(2019/3/2)
接着Metal coreを歯冠内で組立て試適し、適合を確認する。
(2019/3/2)
Temporary Crown(仮歯)を作製し、経過観察をする。
(2019/3/30)
右上6の最終補綴物を示す。
(2019/4/20)
右上6は抜歯することなく再び自らの歯で噛めるようになった。
(2019/4/20)
装着後1Y2M経過時の所見を示す。「全く違和感はありません」とのこと。
(2020/6/13)
治療方針
・初診時に仮封のセメントを除去すると右上6の破折は、髄床底部を近心頬側から口蓋側にかけて斜め横断的に完全破折していた。
・髄床底部からはかなりの出血所見があり、当日は止血処置を施し2度目の来院時にはMetal BAND で患歯周囲を固定した。
・幸い根管治療は終了しており、早めに患歯の破折拡大防止の接着性分割Metal coreの作成へと進むことが出来た。
症例のポイント
1.この症例のように、髄床底に及ぶ完全破折の症例でも早期に破折の拡大を防ぐ為のMetal Bandを装着すること
2.根管支持の分割Metal coreを歯冠内で組立接着することで、再び破折面が拡がることのない強固な補強を行うことが出来る。
3.術後は全く違和感なく再び自らの歯で噛める様になり、抜歯してのBridgeやインプラント治療を避けることが出来た。
4.歯を守る歯科医療の一例として提示した。
☆ 歯科医療は[歯を守ることが使命]と とらえ、可能な限り保存を試みるべきである。