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破折歯根の接着・再植保存法 ④[Adhesive & Replantation for Root Fracture ④]

症例基本データ

患者:

39才 女性

初診:

2019(H31)/1/28

主訴:

左下5番が割れて抜歯と言われている。抜歯のほかに治療法はありませんか。


  • 初診時の口腔内所見を示す。左下5番は『破折のため抜歯』と言われている。歯根周囲の骨吸収が進行している。
    (2019/2/2)

  • 2度目の来院時に左下5番を抜歯し、同時に歯根周囲の不良肉芽を掻爬除去する。
    (2019/3/11)

  • 破折歯の状態を示す。垂直破折歯は接着面積が広く、接着保存治療には有利。
    (2019/3/11)

  • 再植時の抜歯窩は充分な血餅で満たされていること。接着・再生した歯根を元の抜歯窩へ再植する。
    (2019/3/11)

  • 再植後は隣在歯に矯正用角ワイヤーで固定し、患歯の安静を確保する。再植直後のX-ray所見を示す。
    (2019/3/11)

  • 左は1ヶ月後の口腔内所見を示す。(2019/4/13) 右は術後3ヶ月の所見。固定wireは除去されTek(仮歯)装着。(2019/6/3)
    (2019/4/13・2019/6/3)

  • 完成した最終補綴物と口腔内の術後X-ray所見を示す。
    (2019/9/7)

  • 術後7ヶ月目の口腔内所見を示す。歯肉の色・形共に天然歯列同様の緊張があり患歯は極めて安定。
    (2019/9/28)

  • 術前(2019/3/1)と術後9M(2019/12/13)のX-ray所見の比較を示す。術前の歯根破折に伴う歯周囲のビマン性の骨吸収像は消失し、健全な歯槽骨の再生の所見を示している。
    (2019/3/1・2019/12/13)

治療方針

「半年前に『歯が割れているから』と左下6番を抜歯した。今回、左下5番をまた『割れているから抜歯』との診断を受けているがこれ以上抜きたくない。」との主訴で来院された。X-ray所見にて垂直歯根破折を確認するも、この様な症例は破折歯根の接着・再植保存法にて保存可能である。同様な所見の他の臨床例を複数例提示し、手術法・術後経過等について説明し破折歯根接着・再植保存法への理解を得た。

症例のポイント

1.左下5番の破折はいわゆる垂直性歯根破折である。
2.この様な破折形態は接着面積が広く確保出来、破折歯根の接着・再植術には有利な症例である。
3.健康な歯根膜を保存することで、術後の破折歯根周囲の歯槽骨の再生は顕著で骨植は堅固である。
4.術後経過も良く、患者さんからは「とても噛みやすく、普通に何でもいただいています」とのコメントを戴いた。
5.破折歯根と言えども安易に抜歯することなく接着保存することでインプラントや義歯を避けてもう一度ご自身の歯で噛めることの意義は大きい。本来の歯科医療のあり方を示す一例として提示した。

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