矯正的歯根挺出法 ⑥ [Orthodontic Root Extrusion ⑥]
症例テーマ 歯髄を守る 歯質を守る 歯根挺出法 冠ブリッジ 接着歯科医療 歯を生かす歯科医療 欠損歯列への対応
キーワード 歯の接着 ブリッジ 部分被覆冠 挺出 削らない治療 神経を抜かない治療 天然歯を守る 歯の保存 歯髄の保存 歯質の保存
症例基本データ
患者:
39才 男性
初診:
2018(H30)/11/17
主訴:
「根が折れているから」と前歯を抜歯した。インプラントが嫌で義歯を入れているが、何かいい治療法はありませんか?
初診時所見。前歯の一歯欠損の状態を示す。義歯が装着されていたが審美的には満足が得られていない。
(2018/11/17)
同部X-ray所見。2⏌右上2は補綴歯で、骨縁下カリエスを認めた。
(2018/11/17)
2⏌のMetal postを撤去し、矯正的歯根挺出法を応用する。術前の所見を示す。
(2018/12/11)
1⏌欠損部にはシェルを取り付けた挺出装置。口蓋側から牽引する。
(2018/12/22)
挺出前(2018/12/22)と挺出後(2019/3/2)のX-ray所見を示す。2⏌の骨縁下カリエスが歯肉縁上に挺出されている。
(2018/12/22・2019/3/2)
歯冠形成の所見。⎿1の健全歯は口蓋側のみ形成(pinledge)し唇側は健全歯質を保存する。
(2019/5/1)
完成した補綴物(Bridge)。⎿1 左上1の表面歯質は全く削去していない。
(2019/5/1)
Bridgeの舌側所見と、同部のX-ray所見を示す。
(2019/5/1)
術後所見。⎿1左上1は術前の天然歯質が保存されている。審美的にも満足な結果が得られた。
(2019/5/1)
治療方針
・初診時に1⏌右上1番は既に抜歯されていた。
・前歯のBridgeを作製するにしても、2⏌右上2番は骨縁下に及ぶ歯頚部カリエスが認められ このままでは予後に不安がある。
・もう一方の⎿1左上1番は貴重な天然歯が健全な状態で保存されている。
・2⏌は矯正的挺出法を応用し、カリエス部分を歯肉縁上に持ち上げること。
・⎿1は唇側の天然歯質は健全なまま保存し、舌側を一部削去しpinledgeを応用することとした。
症例のポイント
1.若くして前歯に義歯が装着され、審美的に問題があった。
2.前歯の一歯欠損は教科書的にはインプラントか両隣の歯を削るBridgeの適応症とされている。
3.骨縁下カリエスを認めた2⏌は歯根挺出法を応用し、⎿1の健全歯は舌側の一部のみを削去し 接着法を応用することで健全歯質の保存に努めた。
4.ご自身の天然歯を最大限生かすことで インプラントを避け、審美的にも十分に満足する結果が得られた。