非抜歯による破折歯根の接着保存法 ③[Non-Extracted Approach for Tooth Fracture ③]
症例基本データ
患者:
49才 男性
初診:
2018(H30)/7/20
主訴:
歯根破折で『抜くしかない』と言われている。他に方法がないか診てほしい。
右下6番(6⏋)破折歯の初診時所見。頬側歯肉が腫れている。
(2018/7/20)
X-ray所見にて歯根分岐部から根尖部に及ぶビマン性の骨吸収像を示す。
(2018/7/20)
矯正用Metal Bandを装着。患歯の離開を防ぐ。頬側歯肉にfistel(膿の出口)あり。
(2018/7/23)
頬側遠心側から舌側への破折線を確認。歯冠部から髄床底・歯根部に及ぶ完全破折。
(2018/7/23)
感染根管治療を開始。歯根長を測定。
(2018/8/24)
根管充填終了後、Metal core装着前に破折線を歯冠内よりv-cutする。
(2018/10/6)
破折部の歯冠内接着、及びMetal core装着後、歯冠形成・印象取得へ。
(2018/12/28)
5M後の口腔内所見。健康歯肉に改善された。「咀嚼に何の問題もありません」という。
(2018/12/28)
初診より1Y5M後のX-ray所見。6⏋周囲に新生骨の再生が認められる。
(2018/7/20・2019/12/27)
治療方針
6⏋右下6番歯の歯冠・歯根完全破折歯である。『抜くしかない』との診断を受けているが、7⏋右下7を「半年前に抜歯しているので、もうこれ以上抜きたくない」という。他の同様な臨床例を提示し、治療手順・術後経過について説明し患歯保存についての理解を得た。
症例のポイント
・破折歯の保存の際は根管治療を先行させる。その際 破折部の離開を防ぐための矯正用Metal Bandの装着が必須である。
・通例(他の症例と同様)により根管治療後、歯冠内で破折部を接着 補強した。
・5M後(2018.12.28)の口腔内所見では、歯肉に緊張があり 極めて健康に推移している。「咀嚼に何の問題もありません」とのコメントあり。
・初診時(2018.7.20)と1Y5M後(2019.12.27)のX-ray所見を比較すると、破折歯根周囲のビマン性の骨吸収像の改善 骨の再生が顕著である。