矯正的歯根挺出法 ③ [Orthodontic Root Extrusion ③]
症例基本データ
患者:
31才 女性
初診:
2016(H29)/4/4
主訴:
右下7が割れている。『もう抜くしかない』と言われているが 抜かずに治す事は出来ませんか。
初診時の所見。
右下7番歯 頬舌的に破折していた。
(2016/4/4)
う蝕は骨縁下に及び、抜歯の適応症と思われる所見を示す。
(2016/4/4)
矯正的挺出法を応用し、右下5・6をアンカーとして挺出を試みる。
(2016/5/2)
矯正的挺出装置を口腔内に装着した所見を示す。
(2016/5/2)
右下は装置を装着してから1M後の所見。既に歯根が挺出されている。
(2016/5/2・2016/6/2)
矯正的挺出完了後、根周囲の歯肉を切除し歯冠長をそろえる。接着Metal core装着後の所見。
(2016/7/21)
テンポラリークラウン(暫間被覆冠)を装着した。
(2016/7/21)
右下7番の最終補綴物を示す。骨植も堅固で「咀嚼に不自由はありません」との事。
(2016/8/16)
最終補綴終了後のX-ray所見を示す。歯根周囲の歯槽骨は極めて安定。
(2016/8/16)
治療方針
・右下7番は歯肉縁下に及ぶ深いカリエスと頬舌的に破折を認め、教科書的には抜歯の適応症と思われます。
・この症例では破折した2根を矯正的に挺出させる事で、それぞれの歯根に接着Metal coreを装着し抜歯を避ける方針を説明。
・当院での他の同様な臨床例を提示し、「抜かずに治療出来ます」と伝えると、あふれんばかりの涙であった。
症例のポイント
・矯正的挺出法を応用するにしても極めて厳しい症例。
・しかしながらこの様な症例でも、歯根周囲に健全な歯根膜があれば 矯正的挺出に伴って歯槽骨が誘導されることから、挺出後も堅固な骨植が得られる。
・抜かない治療/歯根保存の可能性を示す症例として提示した。