根管治療 ①[Root canal treatment ①]
症例基本データ
患者:
28才 男性
初診:
1978(昭和51)年2月
主訴:
下の奥歯が痛くて噛めない。
右下6近心根にlesion(病巣)を認める。下顎左右6番のEndo(根管治療)を開始。開院後4か月目の症例。
(1976/3/9)
根管治療後4年2ヶ月後の所見。右下6のlesionは消失している。
(1980/5/21)
治療後8年7ヶ月後の所見。歯根周囲骨が再生し、根尖部は再石灰化にて閉鎖され正常な歯槽骨像となった。
(1984/10/5)
16年後の口腔内所見。左下6番はメタルクラウンにて修復した。
(1991/3/11)
右下6番Endo(根管治療)40年後所見を示す。歯根周囲骨は安定し、正常像を示す。
(2016/2/8)
左下6番の40年後の所見。この間、冠脱離・隣接面カリエスは認めず。
(2016/2/8)
初診より40年6ヶ月後の口腔内所見。右上1変色歯(無髄歯)への補綴的アプローチはすすめていない。
(2016/8/26)
下顎左右6番の40年6ヶ月後の口腔内所見。経年変化で歯頚部歯肉は退縮傾向。
(2016/8/26)
術後40年6ヶ月。これまで咬合も歯肉状態も極めて良好に推移して来た。
(2016/8/26)
治療方針
日常臨床を進める上で、Endo(根管治療)の果たす役割は最も基本的かつ重要なものであることは論を持たない。十分な拡大・洗浄と緊密な根管充填が求められる一方で、ペリオとの相関や歯根破折の問題等をも考慮する必要がありより慎重さが求められる。今回は初期のEndo症例の中から、比較的長期に経過を追うことのできた症例を提示させていただき問題点を探ってみた。
症例のポイント
開業初期のつたないEndoとCrが40年6ヶ月経過した。この間、冠の脱離・隣接面のカリエスの発現は一度もなかった。根尖部が再石灰化によって自然封鎮されれば、根尖病巣の再発はみられない。毎年の検診は欠かさず、患者さんの自己管理に支えられている。