歯の移植 ③ [Transplantation of tooth ③]
症例基本データ
患者:
30才 女性
初診:
1995年7月3日
主訴:
左下の奥歯が割れて咬めない
口腔内所見。左下奥歯が割れて咬めないとの主訴で来院。
(1995/7/3)
左下7番歯の口腔内所見。初診時のX線にて保存不可能と診断。
(1995/6/20)
左下7番歯を抜歯。歯冠は大きく損傷している。
(1995/7/3)
幸いなことに健全な左上8番歯(智歯、親知らず)が存在していた。X線にて根形態を確認する。
(1995/6/23)
左下7番歯、抜歯1ヶ月後の所見。抜歯窩は治療傾向にある。
(1995/7/28)
左上8番歯を抜歯。左下7番歯へ移植した。隣在歯とワイヤー固定。
(1995/8/1)
移植後3ヶ月後の所見。根管内処置を終了。移植歯の周辺骨は治癒傾向にある。
(1995/11/2)
移植後19年8ヶ月が経過した。この間、他の健全歯同様に咀嚼に寄与。何の不自由もなかった。
(2015/4/10)
上段は移植後13年8ヶ月(2009/3/23)。下段は移植後19年8ヶ月後のX線所見。移植歯の近心壁には外部吸収の所見あり。
(2015/4/10)
治療方針
左下7番歯の崩壊した抜歯窩に健全な左上8番歯(智歯、親知らず)を移植する。歯を削っての歯冠補綴、ブリッジ、インプラントを避け、患者さん自身の天然歯を応用して、咀嚼機能の回復を図ること。
症例のポイント
移植後20年間の長期に渡り、移植歯は咀嚼機能を充分に維持している。移植後20年目に出現した移植歯周囲の外部吸収像は今後も経過観察へ。この症例のように8番歯(智歯、親知らず)といえども、移植保存の可能性のあるケースでは安易に抜歯せずに保存する意味がある。