歯の移植 ② [Transplantation of tooth ②]
症例基本データ
患者:
18才 男性
初診:
1990年11月9日
主訴:
大きな虫歯で咬めない。
初診時のX線所見。左上大臼歯(6番歯)の崩壊が進んでいる。
(1990/11/9)
左上6番歯の口腔内所見。歯冠の崩壊が著しく、保存は不可能。
(1990/12/11)
左上8番歯に健全な天然歯(智歯、親知らず)が存在。X線にて歯根形態の確認。移植可能と診断。
(1991/1/26)
左上6番歯の抜去歯。歯冠、歯根は著しく崩壊し、保存不可能。
(1991/1/26)
左上6番歯の抜歯窩を血餅で満たし、左上智歯を抜去後、直ちに移植(左上8番歯→左上6番歯)した。両隣在歯に接着・固定。
(1991/1/26)
移植直後のX線所見。6番歯の抜歯窩によく適合している。
(1991/1/26)
移植後、歯内療法・根管充填処置へ移行。
(1991/4/9)
移植歯および両隣在歯へ補綴処置・インレー装着。移植後5ヶ月経過。
(1991/6/21)
移植術後5ヶ月経過。移植歯は単独植立し、周囲骨は両隣の健全歯と共に極めて安定している。
(1991/6/21)
治療方針
初診時、すでに崩壊の著しい左上6番歯は抜歯し、左上8番歯(智歯、親知らず)を移植して、咬合を確保すること。
症例のポイント
18歳で6歳臼歯(咬合の中心となる歯)を喪失したが、8番歯(智歯、親知らず)を移植することで、インプラントや健全な両隣在歯を削ってのブリッジを避けることができた。8番歯の歯根膜にはできる限り損傷を与えないように抜歯すること。8番歯の臨床応用症例として提示した。