天然歯ポンティックの臨床応用 ②[Clinical application of natural tooth for pontic ②]
症例基本データ
患者:
52才 男性
初診:
2005年7月26日
主訴:
「左上の前歯がグラついて噛めない。抜けそうで心配。」との主訴で来院。
初診時の所見。「左上の前歯がグラついて噛めない。抜けそうで心配。」との主訴で来院。
(2005/7/26)
上顎の所見を示す
(2005/7/26)
左上前歯の所見。グラついており、下方に挺出している。X線所見にて、歯根周囲骨は根尖部に及ぶが吸収を認める。
(2005/7/26)
二度目の来院時に左上1番歯を抜歯。抜歯後の口腔内所見と抜去歯を示す。
(2005/8/2)
抜去歯の歯根を所用の大きさに切断、削去した。抜歯当日に口腔内の両隣在歯に抜いた天然歯を接着、固定し、天然歯列を回復させた。
(2005/8/2)
3度目の来院時に、口蓋側(裏側)よりメタルネット(Metal Net)にて加強固定を施す。
(2005/8/10)
接着後5年経過後の所見を示す。
(2010/8/10)
術後11年2か月。両隣在歯の周囲骨は長期間安定している。
(2016/9/5)
術後11年2か月の口腔内所見。天然歯を削ることなく(従って歯の神経も保存されている)、11年が経過した。
(2016/9/5)
治療方針
両隣の天然歯を保護する観点から、抜去歯を「天然歯ポンティック」として応用し、接着することで、両隣の天然歯の切削治療をさけること。
症例のポイント
一般的には、前歯の一歯欠損に対する治療法は、インプラントまたは両隣在歯を削っての3本ブリッジが主流であるが、本症例のように患者さん自身の天然歯が存在する症例では、その天然歯を、また天然歯の無い症例では一歯分の人工歯を応用することで、歯を削ることなく永年にわたり審美的にも機能的にも十分な満足が得られている。歯科医療の本来あるべき治療法の一つとして捉えたい。