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陳旧性歯根破折 ①[Obsolete Tooth Fracture ①]

症例基本データ

患者:

50才 女性

初診:

1998/4/20

主訴:

食後に左下4番(小臼歯)がしびれた感じがする。噛むと痛い。


  • 左下4番エックス線所見。①歯根周囲を取り囲むように、び漫性の骨吸収像を認める。
    (1998/1/28)

  • 左下4番口腔内所見。②炎症を繰り返している。③咬合時に違和感がある。 以上により歯根破折の可能性大。
    (1998/4/20)

  • 左下4番冠撤去後、破折歯根を抜去。
    (1998/5/18)

  • 口腔外に抜去された陳旧性の破折歯根。3片に分割破折していた。
    (1998/5/18)

  • 歯根を接着・再生し、口腔内に再植・固定。
    (1998/5/18)

  • 術後1ヵ月。歯肉は比較的安定。
    (1998/6/17)

  • 術後1か月3週間のエックス線所見。根周囲骨は回復傾向にあるものの、まだ不安定。
    (1998/7/6)

  • 術後6ヵ月1週間の口腔内所見。付着歯肉はほぼ隣在歯の状態に回復。
    (1998/11/25)

  • 術後2年4ヵ月のエックス線所見。歯周囲の骨の安定がうかがわれる。
    (2000/9/25)

治療方針

左下4番の臨床症状として、(1)咬合時の違和感(力が入らないなど) (2)根尖部以外からのフィステル (3)エックス線所見での歯根周囲のび漫性骨吸収像から、歯根破折を疑い、破折歯根の接着・再植術を応用し、患歯の保存を試みる。左下4番冠撤去後、歯根を抜去すると近心-遠心の歯根垂直完全破折例であった。口腔外で接着による歯根再生の後、再植・固定した。陳旧性の極めて条件の悪い症例であったが、術後経過は良好で推移している。

症例のポイント

1. 術後のプラークコントロールの重要性を説明し、患者さん自身の十分な自己管理が求められる点を理解していただくこと。
2. 左下4番抜歯の場合、通常隣在歯3番5番の有髄天然歯を削去して補綴することとなり、歯質の削除を避けるためにできるだけ4番の保存を試みた。
3. 陳旧性歯根歯折といえども、歯の保存の可能性を示唆する症例として提示した。

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