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歯根を生かす外科的歯根挺出法 ②[Surgical Root Extrusion ②]

症例基本データ

患者:

49才 女性

初診:

1990/8/1

主訴:

全体が悪いので診て欲しい。齲蝕が長期間にわたり放置されていて、全顎にわたり、歯冠の崩壊が著しい。これまで歯科治療が怖くて我慢していたが、ご主人が当院での治療を終えられた後、一緒に来院された。


  • 初診時の口腔内所見。全顎にわたって著しい歯冠崩壊を認めた。
    (1990/8/1)

  • 外科的挺出法直前の右上3番の口腔内所見。右上4番の残根はアンカーとして使用するため、抜歯せずに保存している。
    (1990/9/27)

  • 垂直加圧根管充填法による右上3番の根管充填
    (1990/9/20)

  • 右上3番に固定用フックを装着後、外科的挺出法を行った。歯質は薄く、脆弱なため破折させないよう細心の注意が求められる。
    (1990/9/27)

  • 外科的挺出法終了後1週間の右上3番のX線所見。
    (1990/10/5)

  • 右上3番と4番の間はキーアンドキーウエイで連結。
    (1991/8/26)

  • 外科的挺出後9ヵ月後の右上3番のX線所見。右上3番周囲の歯槽骨の安定を確認し、最終補綴へと移行した。
    (1991/6/18)

  • 術後8年2ヵ月の口腔内所見
    (1998/10/5)

  • 外科的挺出後8年2ヵ月のX線所見。右上3番の歯根および歯根周囲の歯槽骨は安定している。
    (1998/10/5)

治療方針

右上3.4.5番は残根状態で歯冠部は完全に崩壊。しかし、ここで右上3番が保存できるならば、固定式のブリッジも可能と診断し、外科的挺出法を応用して保存することとした。右上3番の歯内療法(垂直加圧根管充填法)終了後、右上2.4番をアンカー(固定源)として、右上3番の外科的挺出治療を行った。

症例のポイント

教科書的診断では保存不可能な右上3番を抜歯せず、外科的挺出法を用いて保存を試みた。挺出終了後、固定式ブリッジを Key & Key Way を応用して装着した。(1991/8/26)。術後8年2ヵ月を経て、外科的挺出法を応用した右下3番の歯根および歯根周囲の歯槽骨は、安定している。本法が臨床術式として長期にわたって十分な有用性を持つことを示唆した症例として提示した。

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